3.3.2 雲台
 今回のテストの結果からは、「ブレない写真を撮るには」というテストの本来の目的に直結する「この雲台を使えば遅いシャッタスピードでも必ずカメラブレを少なくできる」という雲台を見い出すことはできませんでした。代わりに、ボデーや三脚座の雲台への取り付け易さの違いであるとか、ファインダの視野を意図する位置に合わせた後、レバーやノブを締付けてロックする場合のファインダ視野つまり光軸のズレの方向や量であるとか、ボデーやレンズを三脚につけたまま撮影場所を移動する時のボデーやレンズの安全性など、操作性に大きな違いがあることを認識させられた次第です。

 操作性の一要素としての取り付け易さについては、自由雲台ではボデー取り付けネジがボールと独立して動くか否かで大きな差があり、平型雲台では取り付けネジの回し易さと締付け易さで差が出ました。

 ロック時の光軸のズレについては、テストに使用した全ての雲台でノブやハンドルをロックすることによりファインダの光軸が大なり小なりズレましたが、このロック時のズレの発生のため、所定の位置に光軸を合わせるのに「ロック、微調整のためリリース、光軸微調整、ロック」を繰り返すことになります。従って、このズレの量や方向がロックする都度変わるようでは、光軸合わせに手間取る結果となってしまいます。つまりこのズレの量ができるだけ少なく方向が一定しているということは、雲台の性能として重要になります。

 最後にボデーやレンズの安全性について見ますと、自由雲台は、ボールのロック・リリースの調節がノブ式かレバー式かのどちらかに属するものがほとんどですが、著者は、使おうとする自由雲台がこのどちらに属するかはボデーやレンズの安全性から見るとかなり重要なポイントであると考えます。なぜなら、フィールドでの撮影では三脚にボデーやレンズを装着したまま、かなりの距離を移動することがありますが、レバー式の場合は、そのレバーが予期せずなにかに引っかかってボールのロックが緩み、ボデーやレンズが三脚にぶつかってダメージを受ける可能性が相対的に高いと思うからです。ノブの場合はそのような危険性が比較的低いでしょう。
 今回テストに先立って各種の自由雲台を調査したとき、国産のはレバー式がほとんどで、外国製にはノブ式もかなり多く見られることに気がつきましたが、発想の違いなのでしょうか、それともノブ式は製造コスト的に高価になりがちなため、輸入品でなければ価格的にバランスがとれないのでしょうか、興味があるところです。なおレバー式でもベルボンのPH−2xxシリーズにはこの予期せぬ緩みに対する対策が講じられておりました。

 以上の3点をポイントに、使用した雲台についてテスト中に気がついたことを記します。次の記述の中で、ロックして手を離した後のファインダ視野のズレ量つまり光軸のズレ量は、三脚にジッツォマウンテニアG1228mk2を使い、著者の通常使用時と同様センタポールを約3cm伸ばし、ボデーF5、レンズAF−S80−200/2.8+TC−20Eテレコンバータにより、合成焦点距離約360ミリで約5メートル先の被写体を覗き、被写体上の目盛りにより目視で測定して得た振幅相当の値です。被写体の大きさは約w47cm×h32cmですので、左右のズレ量1cmは2.1%、上下の1cmは3.1%になります。

 光軸を固定する操作時は、一方の手で雲台の台座を持って光軸を所定の位置に合わせ、他方の手でノブやハンドルを操作することにより、雲台表面の緩衝材の影響を極力除くようにしています。
  
1)アルカスイス モノボールB−1(マグネシウム合金製自由雲台)
高さ104mm、直径74mm(突起部除く)、台座の直径55mm、重量655g、三脚ネジUNC3/8

 カメラボデーや三脚座の取付けがネジ式のものとクイックシュー式のモデルがあります。今回のテストでは、手持ちがあったことと各種のボデーやレンズの付けかえ操作が容易であることから、ネジ式を使用しました。
 ボールのロック・リリース(締め・緩め)はノブ式で、そのノブと同軸で締り具合を調節する補助スクリュウと補助ノブがついており、最も緩めた状態を自分の好みに設定することができます。この機能は微妙な位置調節を適度な摩擦力を維持した状態で行いたいときには非常に操作性を良くしてくれます。さらにボールをロックしたまま水平方向の位置(パーン)を独立に調節できる小ノブがあり、例えば360度のパノラマ撮影も容易です。

 ボデーや三脚座の取付台はボールと一体ですが、5mmと薄く、直径は小さめで、周囲にすべり止めのための加工がありません。そのため、ボデーやレンズの取付け時には軸部分を持って回さなければならないことが多く、この点は不便です。メーカーとしては、一般的にはクイックシュー式のモデルを使用することを推奨しているのでしょうか。

 メインのノブを締めてボールをロックするとき、ロックを強める毎にファインダの光軸は上方にズレ、最終的にはロックしはじめた位置から1.2〜1.5cmズレました。左右のズレはありませんでした。

 この節の最初に記しましたように、ノブが不用意に緩む確率は低いと思われますので、機材の安全性は高いでしょう。

 この雲台はボールが球体から僅かにはずして作られているようですが、新品の状態では堅めで、カメラを縦位置にしようとしたときセットしにくいことがあります。また気温が低いところではノブを最も緩めてもボールが動かなくなることがあります。著者の経験では気温−3℃〜5℃の立山室堂でこのようになり、気温が上昇するまで雲台の用を足してくれなかったことがありました。この現象は家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍室によるテストでも再現しました。寒冷地で使う予定がある場合は、事前に冷蔵庫や冷凍庫でテストしておくのが良いでしょう。

  
2)カンボ CBH−5(アルミ合金製自由雲台)
高さ108mm、直径77mm(突起部除く)、台座の直径65mm、重量805g、三脚ネジUNC3/8

 カンボ社のやや大型の雲台で、重量は805gです。カメラの取付けはネジ式です。機能的にはB−1と同様で、大変操作性の良い雲台です。ボールをロック・リリースするためのメインノブの他に、ボールの締り具合を調節する補助リングがあり、もっとも緩めた状態をある程度自分の好みに設定することができます。さらに、B−1同様、水平方向の位置調節用小ノブがあります。
 ボデーや三脚座の取付台は10mmと厚く、直径も大きく、周囲にすべり止めのキザミがあるため、ボデーやレンズの取付けは容易です。

 メインのノブをロックするとき、ロックを強める毎に光軸は左上方にズレ、最終的にはロックをはじめたときの位置から左に1.5cm、上方に2〜3mmズレました。テストした個体では常に左方向でしたが、横方向のズレがあるのはこの雲台のやや使いにくい点です。一旦ロックした後水平方向位置調節用小ノブを緩めると光軸は上方にズレますが、締めなおすとほぼ元の位置にもどります。

 ノブには適度な堅さもありますから、機材の安全性は高いでしょう。

 寒冷地での使用については、家庭用の冷凍冷蔵庫の冷凍室でのテストおよび気温−15℃の冬の上高地での使用では問題は生じませんでした。

  
3)ベルボン PH−273(マグネシュウム製自由雲台)
高さ117mm、直径66mm(突起部除く)、台座の大きさ54×87mm、重量405g、三脚ネジUNC1/4、3/8

 ベルボン社のこのタイプの雲台のなかで最も大きいものです。クイックシュー式のPH−273Qもありますが、テストではネジ止め式の方を使用しました。ボールのロック、リリースはレバー(カタログでは「固定つまみ」)一個で行いますが、このレバーを2mmほど抜き差しすることで緩みの程度を調節でき、必要以上にまた不用意にボールが緩まないようにすることができます。したがってレバー式ですが安全性は比較的高いといえます。ボデーや三脚座を雲台へ取付けるネジはボールとは独立に動くようになっていて、便利です。

 ボールの締付けがはじまる位置から締付けが完了する位置までのレバーのストロークは長くはありませんが、レバーの動きに合わせて徐々にボールの締付けが変化しますので、使いやすいです。ただし、3次元の動きを一個のレバーでコントロールする構造ですので、一旦ロックした後、たとえば水平方向の光軸だけを微調整しようと思ってもそれだけをすることは出来ず、すべての方向の光軸を調節しなおすことになります。

 レバーでボールをロックし、手を放すと光軸は上方に1cmズレました。左右のズレはありませんでした。

 寒冷地での使用については、家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍室でのテストと、PH−263と併用した上高地の−15℃の環境では問題は生じませんでした。

  
4)ベルボン PH−173G(アルミ合金製自由雲台)
高さ129mm、直径65mm(突起部除く)、台座の大きさ55×86mm、重量695g、三脚ネジUNC1/4、3/8

 PH−273と同じ程度の大きさですが、重量は約300g重く、価格は1/2です。機能上、PH−273との最も大きな違いはボールの緩みの程度を調節する機構がついていない点です。レバーを引っ掛けたりした場合はボールがフリーになり、ボデーやレンズが急激に動いてしまう可能性があります。したがって安全性はあまり高いとは言えません。
 PH−273より剛性感が高いことと安価であることから、PH−273と比較するためF5+カルマーニュ640NおよびEOS1NDP+カルマーニュ640Nとの組み合わせでのみテストを行いました。結果的にはF5の場合はPH−273のほうが、EOS1NDPの場合はPH−173のほうがブレにくいということになりましたが、どちらの雲台でもブレの差はわずかでした。

 レバーでボールをロックし、手を放すと光軸は上方に8mm〜1cmズレました。左右のズレはありませんでした。
 
 寒冷地での使用については、家庭用冷凍冷蔵庫でのテストでは問題は生じませんでした。

 その他の事項はPH−273に記したことがそのまま当てはまります。

  
5)ベルボン PH−263(マグネシュウム製自由雲台)
高さ99mm、直径53mm(突起部除く)、台座の大きさ45×72mm、重量250g、三脚ネジUNC1/4、3/8

 PH−273よりひとまわり小型で、機能上は同等の雲台です。手にとった感じはやや頼りなく、今回の重量級ボデー+重量級レンズによる超望遠域での使用には適さないのではと思わせられますが、山岳撮影など荷物を少しでも軽く小さくしたいケースを考えると、どの程度まで有用かを知っておくことも必要であろうと考え、PH−173と同様にF5とEOS1NDPでのみテストを行いました。結果的には期待を上回るもので、ブレの発生具合はPH−173と同等でした。使う上でのPH−273やPH−173との違いは、ファインダを覗きながら位置調節するときの剛性の違いであり、PH−273、PH−173の方がロックして、手を離したときのファインダ視野すなわち光軸のズレが少なくて済みます。

 ちなみにボールをロックし、雲台から手を放すと光軸は上方に1.5cmズレました。左右のズレはありませんでした。

 寒冷地での使用については、家庭用冷凍冷蔵庫でのテストおよび上高地の−15℃の環境では問題は生じませんでした。

 その他の事項はPH−273に記したことがそのまま当てはまります。

  
6)ハンザPro65(アルミ合金削出しの自由雲台)
高さ117mm、直径65mm、台座の直径60mm、重量555g、三脚ネジUNC3/8

 Pro55、Pro45との3つのProシリーズのなかで最も大きいのがこのPro65で、自由雲台の基本的な機能のみを凝縮したとでも言うべき雲台です。台座表面にはコルクやゴム等のすべり止めも緩衝材も張られていません。これはロックして手を離したときの光軸のズレを少なくするには効果的です。その分ボデー下部に痕がつき易かったり、三脚座がないレンズで縦位置撮影する場合はすべり止めがないことになり、レンズ先端側かボデー側のどちらか重心のあるほうが下がってくる可能性が大です。この問題はレンズ先端側に重心がある場合はボデーの右側が下になるように、ボデー側に重心がある場合はボデーの左側が下になるように、縦位置をセットすることによりある程度回避できますが。

 水平方向だけを独立して調節する機能はありません。

 ボールのロック・リリースは長さ5cmの単純なレバーで行う方式であり、うっかりこのレバーを引っ掛けたりして緩めてしまうことが無いよう注意が必要です。安全性の点では疑問が残ります。

 操作しているときは剛性感が高く感じますが、レバーでボールをロックし、雲台から手を放すと光軸は上方に18mm〜20mmズレました。また左右のズレについては、ロック〜リリースを繰り返すたびに方向が異なるなど、ズレる量と方向が必ずしも一定していませんでした。

 ボールのロック、リリースはレバー一個で行う構造であり、B−1やCBH−5のような緩みの程度を調節する機能がないため、一旦ボールをロックしたあと、微調整のためある程度摩擦を保ちながら緩めるのが難しく、その上あるところまでは硬くしまっていて、そこからごくわずかにレバーを緩めると一挙にボールが緩んでしまうような動きになりがちで、結局位置調節を最初からやり直すのと同等の操作を繰り返すことになりがちでした。

  
7)ハンザPro55(アルミ合金削出しの自由雲台)
高さ101mm、直径53mm、台座の直径50mm、重量320g、三脚ネジUNC3/8

 Proシリーズの中の真中の大きさのものです。 特徴はPro65で述べたことがそのまま当てはまります。

 レバーでボールをロックしてゆくにつれ、光軸は上方に25mm〜45mmズレました。ロックをやり直す毎にズレる量が変わり、またロックしている途中で左右にズレるなど、ズレる量と方向が必ずしも一定していませんでした。

 ブレテストはPH−273に対するPH−263のような位置付けで、G1228mk2+F5およびG226+EOS1NDPとの組合せで、Pro65と比較するための最小限度のテストを行いましたが、結果は、F5の場合はPro65がごくわずかにブレが少なく、EOS1NDPではほとんど差がありませんでした。

  
8)ジッツォG1275M(マグネシウム合金製自由雲台)
高さ110mm、大きさ70×90mm、台座の大きさ52×68mm、重量555g、三脚ネジUNC3/8

 ユニークな形状の自由雲台で、カタログではオフセンター式と記されています。本来は雲台単独での販売ですが、今回はG1228mk2三脚とセットで販売されているものを使用しました。ジッツォ社のこの種雲台の中ではやや小さいほうに入ります。ボールをロック・リリースするための直径4cm、厚さ1cmのかなり大きいメインのノブと、ボールを締めたまま水平方向の回転を可能にする小ノブがあります。ノブ式でボールフリーからロック終わりまでのストロークが長く、堅さもありますから、移動中に引っかかって緩んでしまうなどの危険性は低いでしょう。

 ボデーや三脚座を雲台へ取付けるネジは台座とは独立に動くようになっていますので、本来なら操作しやすいはずですが、締め付けるネジの頭が小ぶりなのでしっかりと取付けるにはやや手間取ります。

 ボールの緩み具合を調節する機構はついていません。また仕上の精度があまり高くないのか、光軸を調節するときのボールの動きがゴツゴツして、誇張した表現をすればでこぼこ道を走っているような感じです。このようなことから微調整にはやや手間取ります。ノブ式でロック時のストロークも長いので本来なら使いやすいはずですが、残念ながらそうではありませんでした。

 ボールをロックしてから手をはなすと、光軸は上方に20mmズレました。同時に左に5mmほどずれることもあり、この点でも位置調節にはやや手間取る結果となりました。

  
9)ベルボンPH−460(マグネシウム製2ハンドル1ノブ3ウェイ雲台)
高さ102mm、幅105mm×奥行93mm(ハンドル含まず)、台座の大きさ64×98mm、重量625g、三脚ネジUNC1/4

 テスト開始時点(2000年11月)では、カルマーニュ640IIや630II三脚等とセット販売されていました。カーボン三脚の主要製品のひとつとして、また手持ち三脚の一つとして640Nをテストする関係上、640IIのセット雲台としての性能もテストしておこうと考えました。セットでは脚部のみの価格に数千円のupで済みますが、今回は単品で希望価格×割引率での購入となり、かなり割高になってしまいました。
 ボデーや三脚座の取付けは独立して動くネジとそのネジを締付けるレバーで行いますが、このレバーが4cmもあるため、力の弱い方でも強固に取付けることができ、外すのも容易です。

 マグネシウム製と詠っているだけあって大きさの割には軽いですが、剛性感はあまり感じられません。R8 + R70−180/2.8 + 2× + マーク6Gとの組合せでは、3本のハンドルとノブをそれぞれ締めるたびにファインダ内の光軸がズレ、位置調節に手間取りました。光軸を決め、ハンドルでロックしたあと、これで良しと思ってファインダを覗きながら両手を離すと光軸がズレてしまいました。ロックしたまま脚部に手を触れると、ファインダ像が大きくふらつきました。これは、使用したRレンズの三脚座の面積が狭いため、雲台表面のコルクが悪影響していることも考えられましたが、同じようにコルクが張られている他の雲台ではそのようなことがありませんでしたので、明確な原因は不明のままです。

 F5 + AF−S80−200/2.8 + 2× + G1228mk2によるファインダ光軸のズレテストでは、水平位置調節用ノブを締めると左に1cmズレ、メインのハンドルを締めると上に1cmずれました。何度か繰り返してもズレる量と方向はほぼ一定していました。

 ハンドル式ですので、しっかり取付けておけば、移動中に雲台座部が勝手に緩んでしまうことの危険性は少ないでしょう。

 寒冷地での使用に関するテストは行っておりません。

  
10)ベルボンPH−756(マグネシウム製1ハンドル2レバー3ウェイ雲台)
高さ86mm、幅95×奥行75cm(ハンドル含まず)、台座の大きさ49×72mm、重量415g、三脚ネジUNC1/4

 カルマーニュ530とのセットでセールされていた小型のマグネシウム製3ウェイ雲台です。今回の様な重量級ボデーやレンズでの使用を推奨されたものではありませんが、PH−263同様に「もし使ったらどうなるか」を確認するため、カルマーニュ530三脚とあわせてテスト対象としました。
 ボデーや三脚座の取付けは、PH−460同様、独立して動くネジとそのネジを締付けるレバーで行いますが、レバーの長さは3.5cmあり、比較的容易です。
 メインハンドル以外の2個のレバーは長さ約3cmですが、今回の重量級機材には短く、上下方向の光軸を定めたあと、しっかりとロックしようとしてもなかなかロック出来ませんでした。

 水平位置調節用レバーを締めるに従ってファインダの光軸は左にズレ、最後はロックし始めの位置から1.5cmズレました。続いて上下の光軸を定めてメインハンドルをロックし、手をはなすと、光軸は上に2cm、左に5mmズレました。ハンドル式の雲台は3方向を独立して調節できるのが最大のメリットのはずですが、ある方向の光軸を調節するとき、すでに調節完了した他の方向がズレてしまうのではそのメリットはないことになります。

 メインはハンドル式、他の2つがレバー式ですが、このレバーは小さいですから引っかかって緩んでしまう可能性は少ないと思われます。

 寒冷地での使用に関するテストは行っておりません。

  
11)スリック SH−706(2ハンドル1ノブ軽量雲台)  
高さ99mm、幅95×奥行90mm(ハンドル含まず)、台座の大きさ65×65mm、重量585g、三脚ネジUNC1/4

 カーボン三脚PRO803CFとセット販売されていた雲台です。スリック社のカーボン三脚としてPro803CFをテストする関係上、それとのセット商品としての性能もテストしておこうと考え、対象としました。同社のカタログには「縦位置グリップ付一眼レフ、大口径レンズ対応」との記述があります。この説明からは今回のような重量級機材との組み合わせも使用範囲に入っているように思われます。この雲台をわざわざPro803CF以外の三脚と組合せて使うケースは少ないであろうと判断し、ブレテストは、ボデーとレンズ:F5+AF−S80−200/2.8、EOS1NDP+EF35−350または70−200/2.8、三脚脚部:PRO803CF、カルマーニュ640N による組合せのうちの5種類に限って行いました。

 ボデーや三脚座の取付けは独立して動くネジで行います。ネジの頭は直径4cmのつまみになっていますので、付け外しは比較的容易です。

 水平位置調節用ノブを締めるにつれてファインダの光軸は1cm〜1.5cm左にズレ、続いて上下の光軸を定めてメインハンドルをロックし手をはなすと、上に1cmズレました。水平位置調節用ノブを締めるときにズレる量がやり直すたびに少しずつ異なりましたので、所定の位置にロックし終えるまでに手間取りました。

 また水平位置調節のノブとは別に、水平線の傾きと上下方向との2本のハンドルを操作すること、ハンドルを締めるときにハンドルに少したわみがでることも、最終的にロックし終えるまでにやや時間がかかる要因になっています。

 ハンドルやノブをロックして手を離したときのズレ量は上記のとおり少ない方ですが、撮影中にレンズ先端側、つまり重心がある方が少し下がり、光軸がずれがちでした。今回のような重量級機材+長焦点レンズで使用するにはメインハンドルの締付力がやや不足に思われました。

  
 12)ジッツォ G1270M(マグネシウム製3ハンドル3ストップ平型雲台)
高さ85mm、幅70mm×120mm(3本のハンドルをはずしたとき)、台座の大きさ70×120mm、重量720g、三脚ネジUNC3/8

 多くの平型雲台の中からこの雲台をテストの対象にしたのは、カメラ取付座が広く、その取付座に、カメラ取付ネジの反対側に 3/8インチの雌ネジが切られているためです。この雌ネジに8cm長のボルトを取り付け、そのボルトで三脚座とは別の位置でレンズを下から支えて2点支持とすることにより、ブレを低減出来るのではないかと考えました。左の写真ではカメラ取付座の右端にこのボルトが見えます。
 しかしながら、この結果はかなりの期待はずれに終わりました。このように2点支持したことによる効果は機材によって異なりますが、効果なし〜シャッタースピード約1段分程度でした。さらに、ボルトで下から支えると共に、ショックコードでレンズ鏡胴を雲台に縛り付けるようにしてのテストも行いましたが、結果は同様でした。操作性が極端に悪くなる分を減点すると、あまり実用的とはいえませんでした。

 カメラ取付けネジには直径4cmのつまみがついていますので、G1275Mよりは取付容易です。光軸を調節するときの台座の動きはG1275Mと同様滑らかではなく、微調整に手間取ります。

 ハンドル式ですので、しっかり締付けておけば移動中に不用意に緩んでしまう危険性は少ないでしょう。

 ファインダ光軸のズレテストでは、メインのハンドルを締めて手を放すと上に5mmズレました。水平方向調節用ハンドルのリリース、ロックを繰り返すと、その度に元の位置から左に1cmズレました。

 この雲台でもう一つ気をつけるべき点は、最近のカタログには記載がありますが、メインハンドルを下げてレンズ先端を上に向けようとするとハンドルが三脚の雲台取付座や三脚の上部に当たってしまうため、次の写真のように通常の使い方では約20度よりも上方に向けるのが難しいことです。レンズをもっと上方に向けたいときは、カメラ取付座の反対側に取付けなおさなければなりません。今回ブレ低減のためのレンズ支えボルトをとおした雌ネジは、本来はこうした場合のために切られているとおもわれます。可搬性、操作性、安全性、ブレ発生具合を見た場合、著者には今回のようなボデーやレンズによるフィールドでの撮影にこの雲台を使うべき理由は見つかりませんでした。

 寒冷地での使用に関するテストは行っておりません。

G328+G1270M:ハンドルが三脚の雲台取付座にあたっている 640N+G1270M:ハンドルが三脚にあたっている。

  
13)ジッツォ G1371T(数量限定販売の、3ハンドル+1補助ハンドル3ストップ平型雲台)

高さ164mm、幅84mm×148mm(4本のハンドルをはずしたとき)、
台座の大きさ84×148mm、重量1340g、三脚ネジUNC3/8

 かなり大きい平型雲台で、ジッツォ社のクラス3の三脚と組み合わせることが推奨されています。この雲台をテストに含めたのもG1270Mと同様で、カメラ取付座が広く、その取付座に、カメラ取付ネジの反対側に 3/8インチの雌ネジが切られていて、この雌ネジに8cm長のボルトを取り付け、そのボルトで三脚座とは別の位置でレンズを下から支えて2点支持とすることにより、ブレを低減出来るのではないかと考えたからです。結果は、2点支持とした場合でも今回使用した他の雲台に比較し、特にブレが少ないということはありませんでした。
 ただ、R8 + 70-180/2.8 + 2× + マーク6G との組合せで、2点支持用にボルトを使い、ショックコードでレンズを雲台に強くしばりつけたケースについては、シャッタスピードを4段遅くしてもブレが大変少ない(○)という結果になりました。(通常使用:1/30でブレ発生、ショックコードでしばりつけた場合:1/4でブレ大変少ない(○))。超望遠レンズ使用時に推奨されている「三脚+一脚の組合せ」等と同様な効果が得られた可能性があると推測しています。代わりに,
操作性が極端に悪くなることを覚悟しなければなりませんし、実用にするには更にテストが必要と考えています。
 カメラ取付けネジはG1270Mと同様なもので、取付けの操作性もG1270Mと同様です。光軸を調節するときの台座の動きはG1270Mよりはスムーズですが滑らかとは言えず、微調整に手間取ります。

 ハンドル式ですので、しっかり締付けておけば移動中に不用意に緩んでしまう可能性は低いでしょう。

 ファインダ光軸のズレテストでは、メインのハンドルをロックし手をはなすと、上に約3cm、左に約1cmズレました。このようにズレがやや大きいのは雲台の剛性そのものによるほか、ハンドルが長いためロックするとき著者が意図せずに上下や左右方向のたわみを与えてしまっているためとも考えられます。が、この可能性は読者がお使いの場合もあり得るわけですから、結局はロック時のズレは大きい方である と言えるでしょう。

 G1270Mとは形状が異なり、メインハンドルをかなり(−60度)下げることが出来ますので、レンズを上方に向けることに支障はありません。フィールドで使う場合は大きさ、重さが気になるところです。

 
 @下側の写真で、雲台のカメラ取付台左側に見えるのが2点支持用に取り付けたボルトです。支持できる位置はレンズ毎に変わり、
  鏡胴の可動部以外に限られます。この写真の場合は、雲台のレンズ・三脚座取付ネジの位置を前後して調節しています。
 Aエポキシ接着剤でボルトの先端をカバーし、レンズに傷がつかないようにしています。